冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「うわーーーーん」
寝室から大きな鳴き声が聞こえて、充さんの手がぴたりと止まった。
「……愛が起きたな」
私から唇を離した彼がそう呟く。
「そうみたいですね」
私は頷いた。それからふたりで顔を見合わせ、思わず笑ってしまう。
「今日はお預けだな」
「ですね」
私たちにとって今一番大切なのは娘の愛だ。そんな彼女が目を覚まして泣いているのだから今すぐに行ってあげないと。
「俺が見てくるよ」
私から体を離した充さんがソファから立ち上がる。私も起き上がってソファに座り直した。すると、充さんの手が私の髪に触れてくしゃりと優しく撫でられる。
「菫」
腰を屈めた彼が私と目線を合わせると、さっと素早く唇を重ねた。
触れるだけのキスのあと唇を離した彼の表情はとても柔らかく穏やかで。初夜のときに『俺はきみの心まで欲しいとは思っていない』と冷たく告げた人物とは思えない。
愛娘のもとに向かう充さんの背中を見つめながら、結婚当初には想像できなかった今の幸せがとても愛しく思えた。
――end.


