冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「俺はきみと結婚するつもりでここに来た。三沢家側の話だと、きみもこの結婚には了承していると聞いたが違うのか」
「そ、それは……」
私の同意なしに父が勝手に了承してしまったのだと、正直に打ち明けてもいいのだろうか。
「そもそも三沢家側はこの結婚を断れないはずだ。俺たちの結婚を機にうちの会社が三沢旅館の再建に手を貸すという話は聞いていないのか」
「そうなんですか⁉」
「……聞いていないんだな」
私の反応を見た宮條さんが、やれやれとため息をこぼす。
「三沢旅館が経営に行き詰っているのは知っている。いや、破綻寸前といえばいいのか」
「そこまで悪いんですか⁉」
「それも知らないのか。自分の実家だろ」
信じられないとでも言いたげに宮條さんが眉間に皺を寄せた。
「三沢家に縁談の話を持ち掛けた際、母が三沢旅館の再建の援助についても申し出たらしい。母の提案ではあるが、会長である父も、社長である俺も事前に相談されているし、もちろん了承もしている」
……知らなかった。まさかこの結婚に三沢旅館の運命が掛かっていたなんて。
父がふたつ返事で了承したのは、このことも関係しているのかもしれない。