冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「きみがこの結婚を断れば、当然だがうちは三沢旅館に援助はしない。それでも構わないならきみはこの結婚を断ればいい。きみのことを気に入って、嫁に迎え入れたいと思っている母は残念がるだろうが仕方ない」
クールな表情を崩すことなく、宮條さんが淡々とした口調で告げる。
「どうする? 両親ともう一度話し合うか、この場で俺との結婚に了承するか。決めるのはきみだ」
私は膝の上で握りしめている両手にぎゅっと力を込める。
本音は結婚なんてしたくない。父が勝手に了承してしまったから、とりあえず今日の食事には来た。けれど、結婚の意思は固まっていない。
でも、この結婚に三沢旅館の運命が掛かっているのだと知り、簡単には断れなくなってしまった。
三沢旅館のことは好きだ。従業員たちも子供の頃から知っている人たちばかり。このまま経営難で旅館が潰れてしまえば、彼らは職を失うのだろう。先祖代々続いてきた三沢旅館もなくなってしまう。それだけは嫌だと思った。
私がこの結婚を受け入れることで三沢旅館を守れるのなら……。
「――わかりました」
私は大きく頷いてから、自分の決心が揺らがないうちに言葉を続ける。