秘書はあらがえない気持ちを抱いて 【おまけ①】
「ああ、進一郎様に貰うもん貰えたからな。」と、四郎は進一郎から渡された紙を俺に見せた。

「良かったな。」

「ああ。これでまた従者に戻れる。」

四郎は進一郎の従兄弟である三雪様付の従者だったが、この春、三雪様が大学進学と共に従者から罷免された。

それに納得がいかない四郎はこうして、金森家の権力者である進一郎に三雪様の従者に戻るための推薦状をもらいに来たのだ。

それにしても、四郎があの高慢で高飛車で王様気質と言われる三雪様の従者に戻れることをこんなに喜ぶなんてな。

三雪様には、外の者からじゃ見えない物があるのかもしれないな。

二人の間にも。

喜ぶ弟を微笑ましく思いつつも、ふとイタズラ心が沸いてきた。

「お前、三雪様に嫌われてるんじゃないのか?幼少時からの従者が罷免されるなんて相当だぞ。」

「嫌われてない。ちょっと…
食い違いがあっただけだ。」

「長年お仕えしていて、ちょっとの食い違いで罷免されるということは…
やっぱりお前嫌われてるな。」

「嫌われて、な・い!」

ニヤリと意地悪く笑った俺に、いつもは冷静な四郎がむきになり鼻息荒く言い返してくる。

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