政略結婚は純愛のように〜完結編&番外編集〜
夜更けの加賀家の玄関扉を、由梨は音を立てないようにそおっと開ける。
ただいま帰りましたと、心の中でつぶやいて。
家の中に入り廊下を進むと、リビングに明かりがついていることに気がついた。
さすがにこの時間まで秋元が起きているわけがないから、当然中にいるのは隆之だ。
由梨が遠慮がちにリビングドアを開けるとソファに座っていた隆之が振り向いた。
「おかえり」
「た、ただいま戻りました。……遅くなってすみません」
隆之がはふわりと微笑んだ。
「なんで謝るんだ。東京まで行ったんだ、あたりまえじゃないか。疲れただろう。風呂が沸いてるぞ」
「あ、ありがとうございます」
由梨はそれに応えてから、そそくさと鞄を置きに寝室へ向かった。
寝室の扉をパタンと閉めホッと息を吐く。
とりあえず、聞かれたくないことは聞かれずに済んだ。
今日はもう遅いからさっさと寝ることにすればいい。
由梨はボストンバックからある物を取り出して、ウォークインクローゼットの由梨しか開けない場所へしまう。
そしてまたホッと息を吐いた。
胸の奥がざわざわとして、嫌な感じがする。
またあの自分が目を覚そうとしている感覚だ。
今井家の雑草だった頃の自分。
弱くて惨めな気持ち……。
その時。
パチンと寝室の電気がついて、由梨は顔を上げる。振り向くと、隆之がクローゼットの入口に手をついて立っていた。
「電気もつけないで、どうしたんだ?」
「……ちょ、ちょっと疲れたみたいです。……私、お風呂に入ってきますね」
由梨は慌てて言い訳をするように言って、心配そうに自分を見つめる隆之をすり抜けるようにしてクローゼットを出た。
ただいま帰りましたと、心の中でつぶやいて。
家の中に入り廊下を進むと、リビングに明かりがついていることに気がついた。
さすがにこの時間まで秋元が起きているわけがないから、当然中にいるのは隆之だ。
由梨が遠慮がちにリビングドアを開けるとソファに座っていた隆之が振り向いた。
「おかえり」
「た、ただいま戻りました。……遅くなってすみません」
隆之がはふわりと微笑んだ。
「なんで謝るんだ。東京まで行ったんだ、あたりまえじゃないか。疲れただろう。風呂が沸いてるぞ」
「あ、ありがとうございます」
由梨はそれに応えてから、そそくさと鞄を置きに寝室へ向かった。
寝室の扉をパタンと閉めホッと息を吐く。
とりあえず、聞かれたくないことは聞かれずに済んだ。
今日はもう遅いからさっさと寝ることにすればいい。
由梨はボストンバックからある物を取り出して、ウォークインクローゼットの由梨しか開けない場所へしまう。
そしてまたホッと息を吐いた。
胸の奥がざわざわとして、嫌な感じがする。
またあの自分が目を覚そうとしている感覚だ。
今井家の雑草だった頃の自分。
弱くて惨めな気持ち……。
その時。
パチンと寝室の電気がついて、由梨は顔を上げる。振り向くと、隆之がクローゼットの入口に手をついて立っていた。
「電気もつけないで、どうしたんだ?」
「……ちょ、ちょっと疲れたみたいです。……私、お風呂に入ってきますね」
由梨は慌てて言い訳をするように言って、心配そうに自分を見つめる隆之をすり抜けるようにしてクローゼットを出た。