傷だらけの黒猫総長

何故だか、男の人はわたしを見てそう言ったような気がして、キョトンとする。

ニコ〜ッと笑いながら、道路を渡ってこちらに来た男の人は、やっぱりわたしの横で足を止めた。




「よぉ、嬢ちゃんが“市松(いちまつ)苑香(そのか)”だな？」


「は、はい……そうですけど……」




“かっこいい”お兄さんは、近くでじっくり見ても見覚えがない。

わたしは足を止めて向き直ると、何の用だろうと首を傾げながらお兄さんを見上げた。




「俺は黒羽詠二(くろばえいじ)ってんだ。嬢ちゃんのお母さん、佑香(ゆうか)さんに用があってな。家まで送らせてくれねぇか？」


「え……？　黒羽って……」


「聞き覚えあるだろ？　最近義弟(おとうと)が世話になってるな」


「！」




気さくに笑う詠二さんの言い回しを聞いて、クールなお友達と結びつく。