追放聖女はスパダリ執事に、とことん甘やかされてます!
「ええ。私がいると、息子であるイーサン様の玉座が危ぶまれると思ったのでしょう。
ある日突然馬車に載せられ、『二度と帰ってくるな』との伝言付きで隣国に置き去りにされました。まぁ、そうなるだろうと分かっていて、私も抵抗しなかったのですが」


 レイは平然とそう口にし、クイっと紅茶を飲む。


「そんな……ひどいわ! レイは何も悪いことをしていないのに!」


 言いながら、ヘレナの瞳に涙が浮かぶ。レイの気持ちを考えると、胸がズキズキと痛み、苦しくなった。レイは小さく笑いつつ、ヘレナの手を握り返す。


「追放とはそういうものですよ。けれど、ありがとうございます。お嬢様にそう言っていただけるだけで、心が救われます」


 レイはそう言って笑うが、ヘレナは未だ納得がいかない。

 ヘレナはストラスベストに追放された時、途方もない気持ちに陥った。行く当てもなく、頼れる人もおらず、どうやって生きて行こうと――――これから生きて行けるのだろうかと、そう思った。
 そんな時、ヘレナの前にレイが現れた。レイが居たからヘレナは救われた。もしも彼があそこに居なかったら、ヘレナは絶望に呑み込まれていただろう。


「そんなに泣かないでください。お嬢様の顔が腫れてしまいますよ?
第一、私は正妃様に感謝しているのです」


 レイはヘレナの涙を拭いつつ、穏やかに微笑む。


「感謝? 一体、どうして?」

「あの頃は、兄との王太子争いが激化していて、すごく居心地が悪かったのです。私自身に王位を継ぐ意思は無くとも、周りはそうじゃありませんでしたから。下手をすれば、本格的な内紛に陥る可能性だってありました。ですから、そうなる前に争いの火種を取り除いてくださった――――そう考えれば、正妃様の行いは正当化されても良いと思うのです」

「だけど……だけどレイは行く当てもなく、一人っきりで国外に置き去りにされたんでしょう? やっぱりわたしは納得できないわ。レイが……レイがあまりにも気の毒で――――――」

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