課長に恋してます!

25 石上【美月】

 月曜日の夜。 
 課長が帰った後、玄関で泣いてた。

 奥さんが好きって言葉にズタズタになった。
 初めて聞いた訳じゃないのに、今回は破壊力が凄い。
 
 前よりも好きなんだ。
 好きだから傷は深い。

 奥さんが妬ましい。
 なんで亡くなった後も課長を独占するの? 酷いよ。

 酷いのは私か。
 奥さんが好きってわかってて、課長を好きなんだから。

 自分が嫌になる。
 なんて勝手なんだろう、私。
 また課長を困らせるような事を言った。

 膝を抱えて泣いてると、インターホンが鳴った。
 無視しようとしたら、ドアのすぐ近くから声がした。

「一瀬、一瀬、いないのか?」

 石上だ。
 知ってる人の声にほっとした。

 石上でも誰でもいいから、そばにいて欲しい。
 それぐらい弱ってた。

「うわっ、お前なんで泣いてんだよ」

 ドアを開けると石上が目を丸くした。

「何しに来たの?」

 涙を拭って、石上を見た。

「もらったんだよ」

 石上がぶっきらぼうにケーキの箱を差し出した。

「お前、甘いもん好きだったろ?」
「うん」
「やるよ。じゃあな」
「待って」
「何だよ」
「一緒に食べない?」
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