課長に恋してます!
 石上をリビングに通して、台所で湯を沸かした。
 コーヒーを持って、リビングに行くと、テーブルの上にマグカップが残ってた。
 
 課長のだった。

「誰か来てた?」

 石上の前にマグカップを置くと聞かれた。
 石上はソファの上ではなく、床に座ってた。
 テーブルを挟んだ位置に腰を下ろして、ケーキの箱を開けた。

「美味しそう! チョコレートケーキに、ティラミスに、カシスのムースだ。石上どれにする?」
「俺はいいよ」
「私一人で食べたら太っちゃう」
「なあ、来てたのは、もしかして課長か?」

 胸がズキッとした。

「図星か」

 石上がため息をついた。

「帰国してたんだ」
「奥さんの命日だったから帰国してたの」
「それでついでに一瀬にも会ったのかよ」

 ついでって言葉が本当についでみたいに聞こえて、さらにへこむ。

「会って欲しいって頼んだの」
「それで?」

 土曜日に課長と皇居に行った事や、今日、偶然会った事をかいつまんで石上に話した。

「課長と付き合ってんのか?」

 聞き終わった石上が言った。

「私の片思いだよ」

 ため息が出た。

「ハッキリ奥さんが好きって言われちゃった」
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