課長に恋してます!
「だったら、もうやめればいいだろう」

 眉間に皺を作た石上が苛立ったように言った。

「やめるって?」
「そうやって課長を想って泣く事だよ。そろそろ気づけよ。一瀬がどんなに言い寄っても課長は全然ブレないじゃないか。普通、若い女に言い寄られたら傾くぞ。若いってだけでいいんだから」
「何それ。課長はそんな人じゃない」
「だから止めておけよ。女子高生買うようなオヤジと違うんだからさ」
「やめてよ。課長を変な風に言わないで!」
「課長はな、相当奥さんが好きって事なんだよ。亡くなった後も独身を貫くぐらい」

 視界が涙で歪む。

 石上の言葉が痛すぎる。

「俺、時々課長から奥さんの話聞くけど、かなり好きだぞ。奥さん大好きエピソードばっかりだぞ」

 やめて。胸が苦しい。

「亡くなった後もあんだけ想えるんだから、相当だよな」
「聞きたくない!」

 両手で耳を塞いだ。

「ちゃんと聞けよ!」

 石上が手をどける。

「現実を知れよ! もう課長の事は忘れろ!」

 石上に腕を捕まれた。

「放して!」

 強い力で引っ張られ抱きしめられた。

「お前が泣いてんの見たくないんだよ」 
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