課長に恋してます!
「今すぐという訳じゃないけど、美月のご両親とか、僕の家族に許しをもらえたら、結婚したいと思ってる」
「……結婚」

 幸一さんの口からその言葉が出てくるとは思ってもみなかった。

「美月が嫌じゃなければだけどね。僕は49才で、美月は30才だから、将来の事をよく考えて決めて欲しい。とりあえず僕は健康に気をつけて少しでも長く美月といられるようにするよ」

 幸一さんが笑った。

「もちろん、ちゃんとした婚約指輪も用意するから。これは仮の指輪」

 幸一さんが翡翠の指輪を見ながら言った。

 涙が溢れる。
 幸一さんにプロポーズされるなんて嬉し過ぎる。

「これがいいです!」

 翡翠の指輪を掲げた。

「だって幸一さんが持っててくれた物だから。この指輪を買った日から私の事、考えてくれたんでしょ? 二ヶ月も渡しそびれるぐらい考えてくれたんでしょ?」

 幸一さんが静かに頷いた。

「毎日、気持ちが行ったり来たりした。渡そうと思う日もあれば、渡さない方がいいと思う日もあった。渡す時は美月の気持ちに応える覚悟が出来ていないとダメだと思ったんだ。ただのお土産のつもりで買ったのに、覚悟がいる物になってしまったよ」

 少し困ったように幸一さんが小さく笑った。

「覚悟を決めて渡してくれたんだから、物凄く気持ちがこもってる指輪です」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。でも、結婚の返事は今すぐ決めなくていいから。ゆっくり考えてくれればいい」
「これ以上、考える事なんてありません。私、幸一さんの事が本当に好きで好きで、香港まで来る女なんですよ。幸一さんじゃなきゃダメなんです」
「美月……」

 幸一さんの目がじわりと潤んだ。

「すごいな美月は。いつも感動する」

 幸一さんと顔を見合わせて、互いに笑い合った。
 感動してるのは私の方だって言いたかったけれど、胸がいっぱいで言葉にならなかった。
 
 幸一さん、結婚したいって言ってくれてありがとう。
 きっといっぱい考えて、決めてくれたんだ。
 嬉しい。本当に嬉しい。

 運ばれて来た温かいお蕎麦は今までの人生の中で一番幸せな味がした。
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