課長に恋してます!
 恥ずかしさも何とか乗り越えて、夕食は幸一さんおすすめの日本料理の店に行った。物凄く綺麗な女将さんのいる店だった。
 奥の静かなテーブル席に案内してもらい、幸一さんと向かい合って座る。

 お茶を運んで来た女将さんを見送りながら、幸一さんがそっと囁くように言った。

「ねえ、あの女将さん、美月に似てる気がしない?」

 驚きで目が丸くなる。

「私、全く美人じゃないですよ」
「美月はわかってないな。すごく美人だよ」
「やめて下さい。恥ずかしくて顔が上げられなくなります」
「好きな子はいじめたくなってしまうな」

 幸一さんがクスクスと楽しそうに笑う。

「いじめないで下さい」
「照れている美月が可愛くてね。はい、メニュー。何にする?」

 幸一さんが私の前にメニュー表を差し出す。
 今夜は幸一さんと同じ物が食べたかった。

「幸一さんと同じ物がいいです」
「了解」

 注文が終わると、幸一さんが「ずっと渡そうと思っていた物があるんだ」と言った。
 それからジーパンのポケットからピンク色の包みを出してくれた。

「かわいい包み」
「どうぞ」

 幸一さんに渡された。

「あっ」

 包みを開けると見覚えのある物が出て来た。

「これって……二月に香港に来た時、お土産屋さんで見た気がします」

 包みから出て来たのはシンプルなデザインの翡翠の指輪だった。
 幸一さんは「うん」と優しく頷く。

「あの時、お土産にと思って買ったんだ。よく似合ってたから」
「もう二ヶ月経ちますよ」
「渡しそびれてね」
「どうして?」
「指輪って意味深な物だって気づいたんだよ。だから気楽に渡せなくてね。一瀬君の気持ちを弄ぶようなことはしたくなかったんだ」

 誠実な幸一さんらしい答えだと思った。
 きっと私のことを真剣に考えてくれていたんだ。

「左手かして」

 言われるまま、左手を差し出しすと、幸一さんは薬指にはめてくれた。

「いいんですか? 意味深な場所にはめて」
「そういうつもりでつけたんだよ」

 幸一さんが真面目な顔をする。
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