甘い一夜からの一途な再会愛〜御曹司はショコラティエールを可愛い王子ごとチョコよりも甘く溺愛する〜
解けない魔法
お互いに酔っていたのだと思う。
菖蒲にとって、この男との最悪な出会いから一週間と経たないこの日。たまたま職場の同僚に合コンの穴埋め要員として誘われた。
そこで再会を果たすとも思わなかったし、まさかこの男と一夜をともにする事になろうとは、夢にも思わなかった事だ。
なにせ菖蒲は、この春二十二歳になったばかりだというのに、未だ恋の経験さえもなかった。
だというのに。合コン帰り、この男に助けてもらったのをきっかけに、お洒落な雰囲気のBARに連れて行かれた流れで、大好きなチョコレート談義に花を咲かせる事になった。
その上、長年抱いていたコンプレックスをうっかり吐露してしまった事で、未知の世界へと脚を踏み入れる事になろうとは……。
たとえるならおとぎ話にでも登場してくるような王子様然とした、甘やかな相貌の男から、
『だったら、ちょっと試してみないか? 俺とそういう事ができるかどうか』
まさかそんな提案をされるとは思わず、驚きのあまり問い返す。
『試してみるって、どうやって』
眼をパチパチさせキョトンとする菖蒲の事を、男は思いの外優しげな眩しいくらいの微笑を湛えてやけに甘い声音で囁きかけてくる。
『そんなに難しく考えなくていいから。ほら、目、瞑ってみて?』
あたかも唆されてでもいるかのような心地だった。