秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜

秘書に断られては元も子もないからと、そういった話は直接社長に連絡が来るそうだ。


「でもそれは、桜じゃなくこの会社に興味があってのことだから、全部断ってきた。桜を利用してこの会社を手に入れようなんて、冗談じゃないからな」

「そうだったんですね」

「しかし、だ」

「はい？」

「いつまでも俺が桜を守ってやれるわけでもないし、もしかしたら判断を誤る事だってあるかもしれない」

「そんなことは･･」

「無いとは言い切れない。だからもし、俺に万が一のことがあったら、桜を頼む」


そう言われて、俺は深々と頭を下げた。

本来ならば、俺が許しを請うべき側なのだ。
自分に、桜さんを任せて欲しい･･と。


「服部」

「はい」

「桜を、誰にも渡すんじゃないぞ」


そう言われて、少し怖気づく。


「･･あの、ひとつだけいいですか？」

「何だ？」

「本当に、私でいいんですか？」


俺は念押しした。

そこに桜さんの意志は無かったし、桜さんが首を縦に振らなければ成立しないことではあるけれど。


「桜には会社を、そしてお前には桜を託したい。俺が愛するふたりに、俺の大切なものを遺(のこ)すよ」


まるでこの先に起こる事故を予期していたかのように、前社長は『遺す』と口にした。