身代わり花嫁として嫁ぎましたが、どうやら旦那様も身代わりのようです?
 一通り話を聞き終わった国王陛下がソフィに向かって口を開く。


「ソフィ・ヴァレリー。罪状にあった内容を読んだであろう。自らの罪を認めるか」

「…………陛下ぁ! 私はヴァレリー伯爵夫人に毒を盛っていません。盛ったのは私の母と主治医なんです! 私は何もしておりません!」

「……母親と主治医が毒を盛ったことを知っている時点でそなたにも罪があるのだ。ソフィ・ヴァレリーと母親のシビル、医者だと偽ったニールの刑については後日伝える。ヴァレリー伯爵は、ソフィ・ヴァレリーとの養子縁組の解消について検討しておくように」

「陛下……! せめて夫のリカルド・シャゼル様に会わせてください、私を助けてくれるかもしれません!」


 ソフィの言葉を無視して出て行く国王陛下、泣き叫ぶソフィ、床に突っ伏したままのお父様。しばらくして騎士たちがソフィを連れて行き、この場は解散となった。


 お父様はこれから、ソフィと縁を切らねばならないだろう。ソフィは平民の、主治医とシビルの子に戻る。

 私のことを不義の子だと疑い、突然現れた銀髪の少女を実の娘だと心から信じて可愛がったお父様。でも私はお父様のことを責めることはできない。だって私もまたソフィやシビルを疑うことなく、彼女たちと戦うことを避けて逃げたのだから。

 お父様と私は、これからお母様にどんな顔をして会えばよいのか。

 リカルド様がソフィに名乗らなかったことで、少しだけ気持ちは救われた。リカルド様がこの場にいることが分かったら、ソフィはますます私を恨んだだろう。私がリカルド様に取り入って、夫婦で申し合わせてソフィを陥れて復讐したように感じるだろうから。

 心の中をズタズタに切り裂かれたような苦しさに耐えて立ち尽くす私の後ろから、私の肩にそっと誰かの手が触れた。振り向くと、ユーリ様が立っていた。


「リゼット……大丈夫か?」

「…………」


 ユーリ様の声を聞いて、張りつめていた糸がプツンと切れたように、私は大声を上げて泣いてしまった。ユーリ様は私の頭をご自分の胸にそっと押し付け、私が泣き止むまで何も言わずに一緒にいてくれた。
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