身代わり花嫁として嫁ぎましたが、どうやら旦那様も身代わりのようです?
 国王陛下の前でソフィの罪状が読まれた時、私はシビルやソフィからお母様を守れなかったことを心から悔いた。お母様に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
 いくらユーリ様について行きたくても、お母様への罪悪感がある限り、ここを離れる勇気がない。

 そんなことをしたら、私は一生お母様に対して顔向けできない気がするから。


「リゼット様。もしご自分のお気持ちがハッキリ決まっていないのなら、ぐちゃぐちゃのままユーリ様にぶつけたらよいのですよ。何でも一人で解決しようとしないで良いのです。私はここを離れますが、伯爵夫人のお世話はグレースさんがしっかりなさっていますし、ヴァレリー伯爵様ももうお元気です。伯爵ご夫妻がこれからどうなさるかは、お二人がお決めになることです」


 私の髪の毛が菫色になった理由を、リカルド様はお父様にも説明してからドルンへ発った。お父様は、お母様や私へどう接していいのか分からないのだろう。お母様が目覚めた後も、まだ一度もお母様の部屋を見舞っていない。

 お父様とお母様は、もう一度夫婦としてやり直す選択をするのだろうか。


「……駄目よ、ネリー。やっぱり私には心配ごとが多すぎて、ユーリ様に自分の気持ちをお伝えできないわ」

「では、心配ごとを洗いざらいユーリ様にお伝えになってください。いつまでも逃げていると、だんだん周りもイライラしてきますからね。とにかく、明日は絶対にお二人で! では、お休みなさいませ」


 言いたいことだけ言ってネリーが去った後、私はベッドに入っても寝付けず、テラスに出た。

 リカルド様との離婚問題が一番心に引っかかっていたことだけど、それが解決した今、

 お母様に申し訳ないという気持ち
 お父様とお母様がこれから夫婦としてどうなさるのかを心配する気持ち

 自分の中で整理できていないのはこの二つかもしれない。


 ネリーは、ぐちゃぐちゃの気持ちをそのままユーリ様にぶつけろと言った。ユーリ様は受け止めてくれるだろうか。何の結論も出ていない私を許してくれるだろうか。

 ユーリ・シャゼルとリゼット・ヴァレリーとして、二人きりでゆっくりお話するのは明日が初めてだ。身代わり夫と身代わり花嫁という関係ではなく、ちゃんと本物の自分同士、向き合って話し合おう。

 夜空には雲ひとつなく、明日は綺麗に晴れそうだ。良い結果になりますようにと星に向かって願いをかけた。



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