身代わり花嫁として嫁ぎましたが、どうやら旦那様も身代わりのようです?

(ガチャ)


…………

………………あれ?


(ガチャ)



「……リゼット様。なぜ扉をまた閉めたのですか?」
私の後ろから、ネリーが尋ねた。

「何だか今、見てはいけないものを見た気がするの」
「は? どういうことですか?」

 私の見間違いかしら。


 厨房の扉を開けた目の前に、使用人たちが賄いを食べるためのテーブルがあった。そのテーブルに付いて、ちょうどパンを食べようと大口を開けていた人と目がバッチリ合ったのだけど。

 ……その人、旦那様だった気がする。


「そんなわけないですよ。ここ厨房ですよ」
「そうよね。見間違いよね。もう一度開けるわ」


(ガチャ)


 先程は数人が楽しそうに朝食を取りながら座っていたのに、テーブルには誰も居なくなっていた。

「やっぱりおかしいわ。絶対おかしいわ」

 私がドアノブに手をかけたまま呟くと、厨房の奥からエプロンをつけた中年の女性が出てきた。

「もしかして奥様ですか……!? こ、こっ……こんなところにいらっしゃってどうなさいましたか!」
「突然ごめんなさい。もし違ったら申し訳ないのだけど、今ここのテーブルに旦那様がいなかった?」
「旦那様? いませんいません! さっきからここには誰もおりません。使用人たちは朝食を食べ終わって仕事に戻りました。奥様はどういったご用事ですか?」

 彼女の声は震えている。

「あ……厨房をお借りしたくて」

 私は厨房に入り、調理道具の場所や食材の場所を教えてもらった。その後は、その女性の使用人にも外してもらう。さすがの私も、こんなあからさまに恐れられては気が引けてしまうわ。

 結局、旦那様のことは、何だかうやむやにされてしまった。

 見間違いではないと思うのだけど、まさかこの屋敷の主人が厨房で使用人たちと一緒に賄いを食べるなんて……あり得ないわよね?

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