失われた断片・グラスとリチャード
「ふぅ・・・っ?」
リチャードは息を呑み、体を強張らせたが・・

「旦那様、おかえりなさいませ」
小さな声が、ランプ越しに響いた。

「なぜ・・いる・・?」
やっと、口から出た言葉だった。

杖がなければ、走って逃げていたかもしれない。

「旦那様のお迎えをするのも、お役目です」

少女は、リチャードが室内に入るのを邪魔しないように、
音を立てずに横にどいた。

リチャードは目を細めて、まじまじと少女を見た。

薄い麦わら色の髪を、一つにまとめ、灰色の、くるぶしまであるワンピース。
同じ色合いだが、濃いめの灰色のエプロン、
それは、
コーヒー豆を入れる麻袋に似た、
粗末なざっくりとした生地で、つくってある。
素足に、黒いぺったんこの靴をはいていた。

栄養が足らないようで、青白く、こけたほほ、
目は、ガラス玉のように生気が
感じられない。
焦点が合っていないように見える。


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