失われた断片・グラスとリチャード
グラスは、少し動作がギクシャクした感じであったが、
言われた通りの筆記用具を、
テーブルの上に置いた。

「お前はここに座れ」

リチャードは、杖で机の端を示した。
「お前は文字も読めるし、
書けるのだな。それでは、計算はできるのか?」

リチャードは、本棚の一番下にある、彼が幼い時に使った、
プレップスクールのワークブックを杖で示した。

「その本を取れ」

グラスはしぶしぶ、ワークブックを取り自分の前に置いた。

「その計算問題を、やってみろ」

グラスは口をへの字に曲げて、
戸惑いと拒否の顔を見せた。

「旦那様・・できません。
わかりません・・」

「ふーーん、そうか・・」

リチャードは、芝居がかった独り言のように

「これができるのなら、
図書室の本を、自由に読むことを許可するが・・」

グラスはまだ、唇をゆがめて、
葛藤しているようだった。

「給料も上げてやってもいい」
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