失われた断片・グラスとリチャード
リチャードは、腕組みをして
言った。
「図書室の出入りを、許可する。
お前の暇な時に、使ってかまわない。
それから・・
給料も上げるが、
違う仕事、私の仕事の手伝いを
してもらおう。」

グラスはこれ以上いると、まずい・・・
そう判断したようだ。

困ったように、口をゆがめて、
手をもじもじさせて言った。

「あの・・旦那様、
もう、よろしいでしょうか?」

「ああ、仕事に戻れ」

リチャードが言うと、
グラスは素早く、ペンや紙を片づけて、
狩人から逃げる獲物のように、
図書室から出て行った。

不思議な奴だ・・・

リチャードは窓の外、
石造りの苔むした門番小屋に、
駆け込むグラスの姿を、見ていた。

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