失われた断片・グラスとリチャード
リチャード自身は
美しい碧眼、それもアイスブルーであり、
髪は銀灰色のやや長髪。

肌は男にしては白い。
これは夜行性の生活に、起因するものであろう。

額は理知的で、鼻筋が通り、
唇がやや薄目なのは、冷酷な感じに見える。

しかし、誰が見てもハンサムであった。
長身痩躯(そうく)であり、
黒を好んで着た。

見ようによっては、
鎌を持たないが、杖をつく、
美形の死神のように見えたかもしれない。

王族、貴族も密かに利用する
高級会員制社交クラブ(娼館)の経営と、破廉恥(はれんち)な
小説家としての知名度と・・・

彼は、貴族としての肩書と、
娼館経営の財力もあり、
容姿にも恵まれていた。

外では、一見、社交的で、そつなく振る舞うが、
本当の彼は陽気ではない、日陰を好む、そして人嫌い。
隠遁者(いんとんしゃ)の生活を好んだ。

それにふさわしく、
グロスターの館は、昔の繁栄の面影が薄れ、廃墟のような、たたずまいになっていた。
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