失われた断片・グラスとリチャード

ハモンドの訪問


夕方になろうとしていた。
グレイスは、リチャードの清書仕事に
熱中していたので、時間を忘れていた。

チーーン、チーーン
居間の置時計が、時を知らせている。

リチャードのお茶の準備と、
軽食を何か、用意しなくてはならない。
グレイスが、立ち上がった時だった。

ドンドン

ドアノッカーが、大きな音を立てた。
グレイスがすぐにドアを開けると、ハロルドが立っていた。

「おや?こんにちは、
グレイス、君はここにいたのか」

ハロルドが意外そうに、微笑んだ。
「リチャードに用があって
来たのだが・・・」

「旦那様は、まだお休みなので、
ご面会はできません」
グレイスは少し、うつむき加減に答えた。

「旦那様って・・君はここの使用人?」
ハロルドはいぶかしげに、グレイスを見た。

「はい、使用人です」
グレイスはうなずいた。

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