俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
深澄さんのベッドを借りて眠った翌朝、寝ぼけ眼を擦ってリビングダイニングに移動すると、深澄さんがダイニングテーブルでなにかを書いていた。
黒いTシャツにスウェット、少しだけ寝ぐせのついた髪が無防備でなんだかドキッとする。
「おはようございます」
「ああ、おはよう。これ、涼野も書いとけ」
彼の正面の椅子に座り、差し出された書類をどれどれ……と眺める。
すぐさま目に飛び込んできた【婚姻届】の三文字に、寝ぼけていた頭が一気に覚醒した。
「ちょ、ちょっと気が早くないですか?」
「なんだよ、俺と暮らすことに今さら怖気づいたのか?」
馬鹿にしたように言われ、口を噤む。
そりゃ、親しくもない男性といきなり一緒に暮らすことに、怖気づかないわけがないでしょう。
「俺は昨夜お前と話すの楽しかったし、やっぱり涼野はすごいと改めて思ったけどな」
「えっ……?」
「お前の年で一等航空整備士を受験するって、最短ルートだろう。日常業務の合間に死ぬ気で勉強しないとまず無理だ」