俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
これからフライトなのに、なにを浮ついているんだ……。
胸の内で自分に突っ込み平静を取り戻そうとする。
しかし、どこかヤンキー風の先輩整備士が『大事な機体を汚すなよ』と、ヘルメットの上から彼女を少し小突いただけで、不穏な苛立ちに襲われた。
これは、かなり重症なのでは?
自問自答しながらも、のんびり涼野を見ているわけにもいかず、コックピットへ戻った。
その後も、彼女がライン整備の担当だとついついその姿を目で追ったり、無線越しに聞こえる声にどきりとしたり。どうやら完全に落ちてしまったらしいと自覚しながらも、積極的な行動には出なかった。
パイロットの仕事は過酷だとよく言われるが、整備士も似たようなもの。その職業に就いたところがスタートで、一生勉強を続けなければならない。
整備関連の勉強はもちろんだが、旅客機の製造元は欧米諸国であるため、そのマニュアルはすべて英語表記。
英語力がなければマニュアルさえ読めないのである。