俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない

 涼野は表情を緩め、俺にペコッと頭を下げる。助けになることができて光栄だが、便利な駆け込み寺のように思われているだけでは不服である。

 さて、どうやって意識させようか。

 やがてタクシー乗り場に着いて、涼野と並んで後部座席に乗り込む。

 運転手にマンションの場所を告げシートベルトを締めると、俺はシートの上に軽く置かれた小さな手をギュッと握りしめた。

 窓の方を向いていた涼野がぐるっと首を動かしてこちらを向き、俺の顔と握られている手を交互に見て、戸惑いの声を漏らす。

「あ、あの……この手は?」
「嫌ならほどけばいい」
「そうじゃなくて、なんで繋ぐのかなって……」

 本当はわざわざ聞くのも恥ずかしいのだろう。涼野の頬は徐々に赤く染まり、眉が頼りなく八の字になってくる。

 その顔、加虐心を煽るからやめろって。

「契約結婚とはいえ夫婦になるんだから、たまには親しそうな演技しないとな」

 彼女を苛めたい気持ちをセーブし、もっともらしい理由を告げる。

「その理屈だと、こういう誰も見ていないところで演技しても意味なくないですか……?」

< 64 / 234 >

この作品をシェア

pagetop