ひと夏のキセキ
「なんで俺ばっかり大切な人を亡くさなきゃいけないんだよ。俺が何したってんだよ。意味わかんねぇよな」


乾いた笑いが降ってくる。


そして、一滴の雫が腕に落ちた。


「もう二度と誰も死なせたくねぇってのに、今度はお前が死ぬんだぜ。なんでなんだよ。なんで、あんな思い二度としたくないのに、なんで」


腰に回す腕の力を強める。


“私はずっと遥輝のそばにいる”


そう言えたらどんなによかっただろう。


言いたいのに、言えない。


言っちゃいけない。


「好きにならなきゃよかった。こんなに苦しいなら、好きになりたくなかった。出逢いたくもなかった」


「……っ!!」


また一滴、雫が落ちた。


遥輝の顎を伝い、私の腕に。


日光の温かさを知らない真っ白な腕に。


「俺たち、なんで出会ったんだろうな。神様の嫌がらせにしか思えねぇよ」
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