ひと夏のキセキ
“そんなこと言わないで”


喉まで出かかった言葉が声にはならない。


「しんどい」


「っっ…」


それは、心の奥底からのSOSだった。


たった4文字。


だけど重くて抱えきれないほどのSOS。


冷たい手が私の手首を掴み、腰に絡まる腕をほどいた。


「もう、しんどい」


スルスル…と温もりが消えていく。


「絶対死なないって約束してくれよ…」


掠れた声。


初めて見る遥輝の涙。


すがるように私の両手首を掴んでしゃがみ込む姿は、普段のクールでスマートな遥輝からは想像ができない姿だった。


私が遥輝をここまで追い詰めたんだ。


自分の恋心を優先するあまり、過去のトラウマで苦しむ遥輝を追い込んだんだ…。


「…ほんと……出逢わなければよかったね…っ。私たち…っ」


楽しかったのなんて、一瞬だった。


夢のような時間が崩壊するのも、一瞬だった。


もう、元には戻れないのかな…。

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