ひと夏のキセキ

プラネタリウム


夕方。


来てほしくない時間ほどあっという間に来てしまう。


自力で歩くのはしんどいから、移動は車椅子。


遥輝に車椅子姿見られるのは嫌だな…。


そう思いながらも、お母さんに車椅子を押されて車まで移動する。


プラネタリウムは、病院から車で5分もかからない位置にある。


「ねぇ絢…」


「…何?」


気まずい沈黙。


車椅子が立てる音以外何も聞こえない。


あの日から、お母さんとはずっとギクシャクしたままだ。


こんな身体に産んだお母さんのせい。


そんな言葉を投げかけてしまった自分が許せない。


でも、遥輝とこうなった発端はお母さんなんじゃないかと思うと、もうずっとギクシャクしたままでもいいと考えてしまう。


とんだ親不孝者だよね、私。


親を傷つけて、親より先に死ぬなんて。


ひどい娘だなぁ…。
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