ひと夏のキセキ

転機


「結局、返せなかった…」


あれから2日。


手元にはまだペンダントとペアリングが残っている。


やりたいことリストも…。


プラネタリウムに持って行ってはいた。


そこで別れを告げて、同時に全部返すつもりだった。


でも…できなかった。


遥輝との想い出が無かったことになってしまいそうで怖かった。


遥輝との繋がりが完全に消えてしまうことが耐えられなくって、返すことができなかった。


これでよかったんだろうか。


答えのない自問自答が止まらない。


「…暇だな……」


面会は拒否しているし、遥輝を始めとする青涼の皆の連絡先もブロックしている。


だから誰もここには来ない、いつも通りの日常に戻った。


遥輝と出会う前はこれが当たり前で、何も感じなかったはずなのに。


大きな喪失感があるのはなぜだろう。
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