ひと夏のキセキ
「…絢に会いたいんだけど。どうにかして会わせてほしい」


親父の返事はない。


言葉を選んでいるようで、妙な沈黙が重い。


「……絢ちゃんはもういない」


……は…?


は…?


「どういうこと?」


いないって?


まさか…。


「絢ちゃんの意向だから、僕からは何も言えない」


…なんだよそれ。


「いいから教えろよ。絢は生きてんだよな?どこにいんの?」


もういないってなんだよ。


「絢ちゃんからの伝言。“私のことは忘れて幸せに生きて”遥輝が会いに来たら伝えてくれって頼まれた」


…なんだよそれ…。


俺はお前がいないと幸せにはなれないっつーの…。


「もし自分が死んでも、遥輝には伝えないでほしいって言ってた」


「…あいつ……」


どこまで自分一人で背負い込むつもりだよ…。


「絢は生きてるんですか?教えてください」


ずっと黙っていた葵が口を開いた。
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