ひと夏のキセキ
「…ここじゃアレだから、場所変えて話そ」


予想に反して遥輝の声色は優しかった。


手を引かれるように遥輝の後を追い、教室を出る。


向かった先は屋上。


「屋上開いてるの?」


「うん。屋上嫌?」


「…嫌じゃないけど……」


あまり屋外には出たくないな…。


暑いとすぐに体調悪くなっちゃうし、直射日光はなるべく浴びないようにしたい。


でも、せっかく遥輝が話そうとしてくれてるのに、断るのもな…。


「そっか。ならここでいい?」


遥輝は、屋上へ続く階段の途中で止まり、そこへ腰を下ろす。


やっぱり遥輝はエスパーだ。


私の心をいつも読んでくれる。


「なんでそんなとこ座んの。こっち来いよ」


なんとなく隣には座りづらくて、1段下に座ろうとした私を強引に隣に座らせる遥輝。


その不器用な言動から、私のことを避けていたわけじゃないんだって伝わってくる。
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