ひと夏のキセキ
「ふふっ。よかったぁ。遥輝に嫌われたと思ってた」


少し動けば身体が触れ合う距離に座ってみると、意外なことに少し照れている様子だった。


きまり悪そうに目を逸らす遥輝は、私が知ってる遥輝よりも人間っぽくて親近感が湧く。


遥輝にも困ったり照れたりする瞬間があるんだと思うと、好きという気持ちが加速する。


「悪かった。嫌いになったとかじゃないから」 


「じゃあ連絡返してほしかった。すごく寂しかったんだよ…?」


一人ぼっちの病室は退屈だった。


心が空っぽになったようだった。


「ごめん。アイツがずっとお前のこと診てると思うとイライラして」


「…なんで?神田先生となにがあったの?」


簡単に聞いちゃダメなことなんだろうと分かってはいたけれど、このままじゃずっと心にモヤモヤが残り続ける。


神田先生との関係もギクシャクしてしまうのが嫌だ。


「それはお前には関係ないことだから。ただとにかく、俺はアイツが嫌い。関わってほしくない」
< 86 / 353 >

この作品をシェア

pagetop