ひと夏のキセキ
そんなこと言われたって…。


神田先生は私の主治医。


今更変えてくれなんて頼めないし、第一私は神田先生のことが好き。


「前も言ったかもしれないけど、それはできないよ。理由もわからないまま先生を遠ざけられるはずがない」


いくら遥輝のことが好きでも、神田先生との関係性まで遥輝に握られたいとは思わない。


その気持ちを真っ直ぐ目を見て伝えても、遥輝は不満げに私を睨むだけ。


このままじゃ今度こそ嫌われちゃうのかな…。


でも…。


「私が先生と関わるのをやめないからって理由で遥輝に嫌われるなら、もうしかたがないことなんだなって受け入れるよ。ごめんね」


ここまであの手この手で私の命を伸ばしてくれた恩人だ。


神田先生には返しても返しきれない恩がある。


それを分かってほしいのに、遥輝には届かない。
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