激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました


『困ってそうな人見かけると、駄目なんですよね。何か手助けしなきゃって思ってしまって。勝手に体が動いちゃうというか。なんか、性分なのかもしれないです』


 そう答えた彼女は、『では、失礼します』と頭を下げた。

 最後に『洗ってから貼ってくださいね』と言い残し、後腐れなくショッピングモールの従業員専用口の向こうに姿を消していった。

 彼女が立ち去ってから名前も聞かなかったことに気がついた俺は、彼女の巻き起こしていった不思議で優しい空気に完全にのまれていたのだろう。

 結局、腕の傷の原因になった一件は、俺を計画的に狙っての犯行だというのが後日わかった。

 依頼人の無実を証明されては不都合な人間は存在する。そういった相手に狙われることは、弁護士をしていて無くない話なのだ。

 印象的だった名前も知らない彼女との出会いからもうすぐ一年半。

 彼女との再会が東京の、しかも自分の働く事務所内であるとは思いもしなかった。

 名前は聞いていなかったけれど、顔を見てあのときの彼女だとすぐにわかった。

 一方で、彼女のほうに俺のことを記憶に残しているリアクションはなく、その様子がますます気に入る要因となった。 

< 133 / 235 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop