激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました


 ワゴンの一番上の引き出しから、割れた爪を修復するためにイクステンションジェルとフォームを取り出す。

 イクステンションジェルは通常のベースジェルよりももったりとしたテクスチャーで、割れた爪の補強や、長さだしなどに使うタイプのジェルだ。

「失礼します」と亀裂の入ってしまった右手人差し指を手に取った。

 爪と皮膚がくっついている境目のイエローラインと呼ばれる線に沿って、フォームを固定し、イクステンションジェルを筆で塗布していく。


「ごめんね、ありがとう。いつも丁寧にやってくれて嬉しいわ」

「いえいえ、とんでもないです! では、ライトお願いします」


 補強を硬化してもらうように促し、手早く使い終えた手元の材料を片付けていく。

 今日のオープン一人目のご予約、大神田(おおかんだ)潤子(じゅんこ)は私の伯母。母の姉だ。

 私がネイリストを目指すと知ったとき、一番の客になると言ってくれたのが潤子伯母さんだった。

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