激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました


 その日の晩。

 シャワーを浴び、髪をタオルドライしながら冷蔵庫を開ける。

 中に一本だけさくらんぼ味の缶チューハイが入っているのを思い出し、迷わずそれを手に取った。

 家でひとりで飲むことはあまりない。

 これは食材の買い出しでスーパーに行った際、期間限定で並べてあるのが目に留まり、なんとなく一本買ってみたものだった。

 プルタブを上げると、プシュッといい音が聞こえる。


「いただきます」


 缶のまま口をつけた期間限定のさくらんぼチューハイは、甘酸っぱい優しい味わいで、ジュースのように飲みやすい。

 調子に乗って飲みすぎてしまいそうな風味だ。

 ふと視線を上げて目に入ってきた、今日着ていたワンピーススーツ。

 クリーニングに出して潤子伯母さんに返さなくてはと思いながら、今日の出来事を振り返る。

 香椎さんの綺麗な顔が意地悪く微笑むのが蘇り、打ち消すように缶を呷った。

< 51 / 235 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop