激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
「じゃ、乾杯で」
「はい」
グラスを手に、香椎さんに続いて口をつける。ノンアルコールビールはあまり飲まないけれど、すごく美味しく感じられた。
高級店でしか飲めない特別なものなのかと勝手に思い込む。
でも、なんだかすごく変な気分だ。
香椎さんと向き合って、こんな風に乾杯したりして。
「なんだ、人の顔をじっと見て」
「あ、ごめんなさい。変な意味じゃないんです。なんか、不思議だなって、漠然と思って」
「というのは?」
「いや…… お見合いの代理をして、その相手が一度会ったことのある弁護士さんで。それで、こんな風に食事をするなんて不思議なこともあるんだなって」
「一度、か」
「え……?」
香椎さんはフッと笑い、「いや、なんでもない」と箸を手に取る。
「今の仕事は始めて長いのか」
「今の仕事は、六年目になります。あ、でも開業しては間もないです」
「それまでは?」
「それまでは、地元のショッピングモール内のネイルサロンで働いていました。実家は長野なんですけど」
「へぇ、長野」
香椎さんの特に興味もなさそうな反応に、いらない情報まで口にしたと思う。