ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
「コレット、怖くないからね。この馬はレイラって言う名前だから、名前を呼んであげてね」
「はい! エリオット様!」


 高いところから失礼しまーす。恐る恐る馬の目をのぞいてみたんですけど……かっ、かわいいー!


「……レイラ」


 おっと、私がレイラの名前を呼んだら、少しレイラが歩き始めました。お馬さん賢いのね! 自分の名前が分かるんだわ!


「コレット、すごく上手だよ」


 エリオット様がレイラの横について一緒に歩いてくれます。とっても優しい目……レイラに対して。レイラだけじゃなく、私にもその優しい目線をいただけませんか。


「そう言えばコレット」


 エリオット様が太陽のような笑顔で言いました。


「はい、エリオット様。なんでしょうか」
「コレットはレオナルド王太子殿下の婚約者候補なんだって? さっき聞いたんだ」


 ……へ?


「王太子殿下は年が近くてね。僕が言うのもおこがましいけど、お互いに名前で呼び合うほどの大切な友人なんだ。仲良くしてあげてね」


 そ、そんなぁ……。そろそろだとは思っていたけれど、もう具体的に婚約の話が進んでいるなんて。しかもその話を好きな人から聞いてしまう、この状況一体なんなの!


「私はその婚約、あまり気が進まない……です」


 レイラを撫でながら、ちょっとモジモジしてしまいました。私ったら、まだまだ子供ですね。


「だって私は、エリオット様みたいな人と結婚したいからっ……!」


 言いました!言いましたーっ! 子供だからこそできる、無邪気な告白作戦!
 エリオット様はずっと太陽のような笑顔で見ています。レイラを。


「そっかそっか! 大丈夫だよ。多分レオナルドだって、君が湖に落ちているところを見たら手を差し出してくれると思うよ」


 クスクスと笑いながら、エリオット様は私の告白を華麗にスルーしました。

 レイラの横を、馬に乗ったジェレミーお兄様が疾走しています。お兄様はいつだって、新しいことをすぐに覚えてしまう。それに比べて馬にも上手く乗れない、告白はスルーされる、そんな自分がミジメです。はい。


「エリオット! 少し遠くまで行かないか?」
「ああ、行こう! ごめんねコレット。今日はここまででいいかな。また夕食でね」


 私が返事をする前に、エリオット様は私がレイラから降りられるように手を伸ばしてくれました。ああ、私を湖から救ってくれた、あの大きな手だわ。エリオットさまぁ!

 でも、名残惜しく感じていたのは私だけだったようです。エリオット様とお兄様の二人はすぐに出発してしまって、私はまた一人遊び。
 王太子様との婚約の件、お母様に聞きに行こうかしら。私よりもリンゼイの方が王太子様にお似合いよって、ちゃんと教えてあげないといけないわよね。
< 11 / 244 >

この作品をシェア

pagetop