ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
 この前、ムーンライト・フラワーを取りに来たのも、レオ様に返すためと言いながら、もしかしてヒロインと一緒に一夜花を見たいからだったりして。
 ……いやいや、根拠が薄すぎるわ。ちょっと言動がおかしいからと言って、勝手な想像でマティアスを疑うなんて。私ったら酷い悪役令嬢ね。

 でも、仮にマティアスが攻略されちゃったとしたら、悪役令嬢コレット・リードってゲームのシナリオではどうなるんだっけ。確かレオ様が側妃にのめり込んで、私のことを一生放置プレーパターンだったはず。

 側妃ですって。
 側妃なんて、一体どこから見つけてくるの?

 はっ、もしかして。
 この夏期休暇中、全くレオ様に会えない理由って。まさか、私以外に好きなご令嬢でも現れたってこと?!
 もしそうなら、レオ様に告白する前からフラれてしまったということになります。エリオット様の時と同じです。

 分からないことが多すぎて、私の不穏な妄想はどんどん膨らんでいきます。


「コレット。せっかく会ったし、少し一緒に街にでも行かない? レオに会えなくて寂しいでしょ? 買い物にでも付き合うよ」
「でも私、レオ様を待ってて……」
「レオは、忙しいんだってさ。仕方ないよ。行こう」


 マティアスの目は、悲しそうです。
 ありがとう。ヒロインに攻略されちゃっても、マティアスはマティアスだわ。幼馴染の私のことは心配してくれているのよね。
 悲しいけど、レオ様が現れるわけないなんてことはちゃんと分かっていました。それでも、他にレオ様に会う手段がなかったんだもの。


「そうね、マティアス。気分転換に付き合って頂いてもいい?」


 もちろん、と腕を差し出したマティアスと一緒に、私は王都の中心街に向かいました。
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