ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
「レオ様! 遅い時間に申し訳ありません!」
「いや……別にそれは……なんだか罪悪感もあるし」


 コレット。遅い時間にここに来るのが申し訳ないなんて言われたら、俺は罪悪感で死んでしまうぞ。時間も考えず、コレットを呼び出しまくっていたのは俺なんだから。
 それに不可抗力とは言え、俺は一日中メイのエスコートをする羽目になっていた。アイツは足が痛いくせに、ここぞとばかりに買い物だの散歩だの出かけまくるんだ。コレットに会う時間が取れなくて、本当に申し訳ない。


「あの、これ……レオ様に」


 えっと、この厳重に包まれたものは何かな。すぐに開封できそうにないから、開けるのは後にしよう。もう一つは……ムーンライトフラワー! しかも、満開!!

 そうか、今日は夏至だ! コレットは恥ずかしそうに顔を背けている。


「私、少し王都を離れて旅行に行ってこようと思っています。レオ様と離れ離れになりますが、いつもレオ様のことを想っていますので……どうかおべんきょうがんばって」


 ちょっと待て。コレット、言葉の破壊力が強すぎる。離れ離れになってもいつも俺のことを考えてくれているって……完全に俺の事好きってことじゃないか?! しかも、俺がコレットになかなか会えなかったこと、勉強が忙しかったからだと勘違いしてくれている。

 それに、満開のムーンライトフラワーをこんな綺麗な月の下でわざわざ渡してくれるとは。コレット、お前どれだけロマンチックなこと好きなんだよ……。ああ、ダメだ! 今すぐキスしたい!


「キ……」
「……言葉遣いにも気を付けて!!」


 おっ、おおぅ……そんな大声で注意しなくても。ごめん、キスじゃなくて、『待ち合わせ』だったな。あーあ、恥ずかしそうに背中を向けちゃったよ。

 今、俺たちムーンライトフラワーを一緒に見たよな? これって、恋人同士で一緒に見たら結ばれるっていう伝説だよな。つまりコレットは俺のことを……好きになってくれたってことでいいんだよな?


「コレット……これは……そういう意味なのか?」


 分かる。分かるよコレット。顔を両手で覆うくらい恥ずかしいんだろ。俺も、九年間コレットに想いを伝えられずにいたから、その気持ちはよく分かる。

「それでは、私は行きますね。どうか……()ぎ方を大切にしてください!」

 えっ、ムーンライトフラワーって、()ぎ木で増えんの? さすがにこの花を他人に育てさせるのはちょっと気が引けるから、自分でやらないとだな。接ぎ方ってどうやったらいいんだ?

 うわっ、コレット! 恥ずかしくて逃げたな!
 
 ここは絶対キスしておかないといけないところだっただろ。俺も、接ぎ木の方法を模索している場合じゃねえよ!

 あ、手を振ってる。うわあ、可愛すぎる。天使か。コレットに全然会うことができなくて、本当にすまなかった。勇気を出してこうやって気持ちを伝えにきてくれたんだよな。

 俺は、コレットは何も恥じることなんてしていないと堂々と言うよ。メイがどんな卑怯な手を使って俺たちの仲を裂こうとしても、コレットは俺と一緒にいるのが一番幸せなんだって、自信を持って言うよ。

 コレットの気持ちはちゃんと伝わった。
 メイの足が治ったら、二人でちゃんと話そう。

 コレットのことは、俺が命に代えても一生大切にするから!
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