ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
「言わないのなら、こっちだって事を荒立てざるを得ないわね。正式なルートで確認するわよ」
「……やめてくれ! それはちょっと……」
「じゃあ、教えてよ! 本当の事なの?」


 アランは店内を静かに見回し、近くの席に誰もいないことを確認してから、小さく言いました。


「……本当だよ」
「まあっ……!」


 目の前が真っ暗になります。

 アランのようなレオ様の側近中の側近は、王家の皆様の居住塔の警護をしているはず。そのアランが言うのだから、間違いないのだわ。

 メイが続けます。


「三カ月前から、毎週来ているっていうのは?」
「……三カ月前か……まあ、それくらいからだな。毎週来ているよ……」


 アランの言葉から噂が事実であると察した私は、あふれ出しそうな涙をこらえて恐る恐る質問をします。先ほどから心に引っかかっていたこと。


「アラン、先ほどの毛糸店で注文したのは、赤ちゃんのためのものなの?」
「……ああ。王宮に直接届けさせると目立って人に知られてしまうから、俺が代わりに受け取りにきたんだ……」


 注文したお料理もまだテーブルに出てこない中、私は自分の作った黄色の手ぶくろと帽子を持って、店から飛び出しました。

 今のアランの話でハッキリしたわ。

 レオ様は私と会っていない間に側妃を迎えて、その側妃が身籠ったのですね。正式な婚約者よりも先に側妃が身籠ったとなれば、グランジュールの国民たちからの反発も起こるでしょう。
 だから、来月のパーティーで私との婚約破棄を発表して、チョメ令嬢を正式な婚約者にするのだわ。婚約破棄されるかもしれないと覚悟はしていたけれど、まさか既に側妃が身籠っているとまでは想像していなかった。

 悲しいような悔しいような腹立たしいような、自分でも説明のできない複雑な感情に包まれ、私は泣きながら馬車に飛び乗ったのでした。
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