ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
 宿の部屋に荷物を置き、夕方になったら絶対に見せたい景色があると言ったディラン様に連れられて、皆で丘を登ります。メイはメイなりに気を遣っているのか、ディラン様が私に手を差し出したりしないように、なぜか私の手を引いて登ってくれます。こういうところが男前ね。
 丘を登り切ると、エアトンの街並みの向こうに、私たちが馬車で通ってきたお花畑や田園風景が見えます。


「ちょうどいいね、そろそろ夕日が沈む。景色を見ていて」


 ディラン様の言うとおり、夕日の沈む方角である西側を眺めます。段々と沈む夕日は王都で見るそれよりも大きい。夕日が紅色の花畑の上に差すと、まるで自分が金色の野原の上にいるような感覚にとらわれます。


「……きれいだわ」
「きれいですね、こんな景色見るの初めて」
「でしょう? ここはみんなに絶対に見て欲しかったんだ。晴れて良かった」


 ディラン様はその薄いお顔に似合わず、とってもロマンチックな方なのね。王都に閉じこもっていては絶対に見られなかった絶景に、私はしばし嫌なことを忘れて見とれていました。
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