ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
「間違いありません。陛下、妃殿下、おめでとうございます。ご懐妊です」


 ……懐妊?
 ……誰が? まさか母上が?
 …………この年で俺、お兄ちゃん?


「まあ、何という事でしょう! レオナルドを産んで以降は、子供をずっと授からなかったのですよ。それが今になって……」


 おいおい、母上は半分パニックになりながら喜んでるし、父上は天を仰いで嬉し泣き始めちゃったよ。お互いもう四十を過ぎようかというのに、何やっちゃってんだよ……。今更弟か妹ができますなんて言われても、こっちもどんな顔すればいいか分かんねぇ……


「レオナルド! お前に力強い味方ができるじゃないか、もっと喜べ!」
「そ……そうですね。おめでとうございます……」


 初老の侍医が診察を終えて、横にいる弟子のポーラが片付け始める。


「ご出産予定は夏の終わり頃でしょう。しばらくは悪阻(つわり)も大変でしょうから、助手のポーラを毎週来させます。なにしろ高齢出産ですからな。安定期に入るまでは何が起こるか分かりません。くれぐれも、安静になさってください」


 先程は緊張していたポーラも仕事になるとテキパキと動いている。彼女が毎週来てくれれば安心だろう。しかし母上も高齢出産だ。無事に産まれるかどうかも心配な今、懐妊を発表するのは早いな。先送りした方がよさそうだ。

 ……安定期に入るまでは、コレットとの結婚の話も進められないのか。くっ……喪中で一年も待ったのに。


「レオナルド、こんな時にごめんなさいね。コレットとの結婚の日取りをいよいよ決めようかと思っていた時に……」


 本当だよ。俺が結婚をどれだけ待ち望んでいたと……。


「大丈夫だ、レオナルド! コレットとの結婚も大事だが、弟か妹ができることの方がワクワクするだろう? 良かったな!」
「あはは……弟かな、妹かな、楽しみだなぁ……あはは」


 この浮かれポンチ国王が! ちょっとは働け!


< 187 / 244 >

この作品をシェア

pagetop