ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
「コレット、入るぞ」


 レオ様が来た……!
 一回腹を割って話さなければ。あちこち移動するのに忙しくて、何がなんだか分からないわ。


「……へえ、三時間にしてはちゃんと部屋が整ったじゃないか! ジョージやるなぁ」
「レオ様、お部屋を観察している場合ではありません! 何だか私たち、勢いで結婚しちゃった気がするんですけど、どういうことか分かってます?」


 三時間でお部屋を準備したなんて言っているけど、普通に考えて間に合うわけがないじゃない。最後のお掃除やシーツの取り替えくらいはしたかもしれないけど、お部屋そのものはもっと前々から準備してくれていたんでしょう?

 だってよくよく見れば、天井にはムーンライトフラワーのモチーフが描かれているし、クローゼットには私の寸法にぴったりのドレスが沢山並んでいる。

 ……私と結婚する気満々だったんじゃないの。何故それを言葉で言ってくれないのかしら。

 私の妄想も良くないけれど、レオ様だってそういうところがアンポンタンよね。


「勢いで結婚、イヤだった?」
「……そういうことじゃなくて。私まだまだ腑に落ちないこととか分からないこと山積みなんですけど……レオ様だってそうでしょう?」
「いいよ。じゃあ今からお互い、順番に質疑応答の時間にしよう」


 ……PK戦ですか。いいでしょう、先攻行きます。


「プロポーズしてくれたって仰いましたよね? いつですか……?」
「エアトンへの旅行の帰りに、俺に会いに来てくれただろう……その時に言ったけど」
「嘘でしょ? なんて仰いました?」


 ねえ、レオ様。人差し指をくっつけてモジモジするの止めて! 今の私にブリッ子は通じないわよ。


「……誕生日パーティーで、俺とコレットの事を発表してもいいか? と。コレットが断らなかったから、プロポーズを了承してくれたものと思ったんだよ……」
「……分っかりづらっ!! あれは、私との婚約破棄を発表するんだって思ったんです。だってその証拠に、『長い間婚約者のままで引き留めてしまった』と謝っていたでしょう?」
「違う。本当はコレットが学園を卒業してすぐに結婚したかったのに、俺が忙しくて婚約者の立場のまま随分待たせたから謝ったんだ」
「でもプロポーズと言ったら普通、結婚してくださいとか、一生大切にしますとか、今から区役所行くぞとか、そういうやつですよね?」
「……くやくしょ?」
「あ、区役所は忘れてください。私……本当は、レオ様からプロポーズしてもらえるのずっと楽しみにしてたから……もう少しロマンチックに言って欲しかったです」


 しまった、本心を言ってしまった。

 喪が明けてからずっとレオ様に聞きたかったけど、聞けなかったこと。レオ様の方から、結婚の話を切り出してくれるのを、本当は楽しみに待っていたの。


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