ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
「……ということで、みんなに集まってもらった。休日なのに申し訳ない」


 生徒会室に集まってもらったのは、アラン、ジョージ、マティアスの三人。王太子ルートをつぶす案を提案したが、皆はどういう反応を見せるのか。


「あの……まず、この机円卓ではありませんよね」
 可愛い系と言えば聞こえがよいが、とにかく覇気がないジョージ。

「ジョージ、生徒会室に円卓は置けないし、それはどうでもいいだろう。殿下、王太子ルートをつぶすとしたら、殿下は一体どうなさるんですか?」
 直球で痛い質問をしてくるマティアス。


「皆には本当に申し訳ない。コレットを守るために協力してくれていることに感謝する。しかし、王太子ルートをつぶすこともまた、コレットのためなんだ。彼女が未来に抱いている不安を取り除くために、俺はコレットにきちんと自分の想いを伝えようと思っている」


 俺の人望よ。まだ残っているか? 頑張ってみんなを説得してくれよ。


「……殿下」
 アランが口を開いた。
 実はアランには最も負担をかけている。ヒロインがコレットにちょっかいを出さないように、ヒロインの見張りに付けたのだ。アランとヒロインの出会いイベントも予定より早くさっさと終わらせて、この計画当初からこき使っている。


「恐れながら、王太子ルートをつぶす必要性が分かりません。王太子ルートは、コレット嬢の未来が決まっていない唯一のルートです。本当にコレット嬢のことを考えるなら、王太子ルートは残すべきでは」


 彼はそう言ってくると思っていた。アランは一日中ヒロインにべったりついて見張りをしている。一緒に過ごす時間が長いほど自分のルートに引き込んでしまう可能性が高まるから、きっとアランは常に不安と戦っているはずだ。


「アラン。君には大きな負担を強いていて済まない。しかし……」
「……殿下!」


 まだ話の途中なのに、アランが大きな声で口を挟んできた。まずい展開だ。アラン、もしかして怒っているのか?


「私はほぼ一日中、ヒロインのそばで見張りをしています。人前では何もありませんが、二人きりになるとすり寄ってきて、猫なで声で私の名前を呼んでくるのです。腕をつかまれたり指をなでられたり……、これはセクハラではありませんか?!」
「……セ、セクハラ?!」
「そうです! しかもこのままだと、私はあの女と二人きりで一晩を明かすイベントが発生します……! これがセクハラではないと言えますか?」


 アランが顔を真っ赤にして怒っている。確かにヒロインと一つのベッドで寝るなんて、このゲームの中で最も苦痛を伴うイベントだ。


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