俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
 その先を口にするのは少しためらう。けれど、今の台詞に込められた意味に気づかないほど、鈍感にもなりきれない。

 彼はさらりと告げる。

「同じチームになってからずっと、俺は南ちゃんが好きなんだけど……社長も結婚したことだし、そろそろ本気で口説いていいかな?」

 急に男らしさを増したその声に胸が小さく跳ねた。南はうつむき、黙り込む。

(私が善を好きだったこと、バレてたんだ。それにしても、中野さんが私を好き? 考えもしなかった)

 あんなに善に愛されているのに自分との仲を疑うなど、日菜子は鈍すぎると思っていたが、人は案外自分に向けられる好意には鈍感になるのかもしれない。

 中野がふいに顔を近づけてくる。

「失恋の特効薬はほかの男に目を向けてみることだと思うけど?」

 ほんの少しドキドキしてしまったことをごまかすように、南はプイと顔を背ける。

「傷心の女性につけ込むのはどうかと思いますよ!」
「俺はほら! 南ちゃんも知ってのとおり、腹黒い男だから」

 彼の手が伸びてきて、南の頬に触れる。

「欲しいものを手に入れるためなら、卑怯な手段も遠慮なく使う。用心しといて」

 彼のペースに乗せられそうになるのが怖くて、南は必死に反撃の手を探す。

「そ、そうだ! 彼女の家に行くんじゃなかったんですか? 私、彼女持ちの人からの告白は受けつけない主義なので」

 南の言葉に中野は待ってましたとばかりにニヤリとする。

「もちろん、新しい彼女は南ちゃんを想定してるんだけどな」
「い、家には絶対にあげませんから!」

 南の絶叫と楽しそうな彼の笑い声が夜空に溶けていった。

                                                   END
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