俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
「名前や親は関係ない。俺はお前の丁寧で真面目な仕事ぶりを買っている。経験を積んで、自信と積極性がつくとなおいいだろうな」

 誠実な瞳と言葉から嘘がないことが伝わってくる。無意識に頬が緩んでしまう。

「そもそも、俺が両親から縁談の話を聞いたのは三週間前のことだ。お前はとっくに入社済み」
「そうなんですね。失礼な勘ぐりをして申し訳ありませんでした」

 日菜子が頭をさげると、彼はふっと笑んだ。

「もうひとつ、訂正してくれ。俺は氷堂地所の娘と結婚したいとは思っていない。というか、白状すると誰とも結婚したくない」

 彼はおどけたような仕草で両手をあげる。

「えぇ? たった今、縁談を受けるつもりだと……」

 日菜子の頭は疑問符でいっぱいになる。彼がなにをしたいのか、さっぱりつかめない。
 善はにっこりと笑って日菜子を見る。

「つまり、これは契約結婚だ。俺たちは結婚するが、頃合いを見て……そうだな、一年か二年くらいか? 離婚する」
「り、離婚?」
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