戻り駅
 こんなやつらへ向けて、自分が駆け引きを持ち出す日がくるなんて思ってもいなかった。


「おい、やめとけよ誠」


 良治が眉を寄せて言う。その顔はもうこれ以上関わるなと言っている。


「頼む! 琴音だけはやめてくれ!!」


 叫ぶように言い、その場に膝をついて頭を下げる。


 額が伸びた草花にこすり付けられて青臭い匂いにむせそうになった。


「もうやめて!」


 そんな叫び声が聞こえてきたのは、そのときだった。

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