わたしの推しはオオカミ王子さま



……な、何事?傘?イレテヤロッカ?

なんだ、幻聴?うん、きっとそうだ。あの大野くんがそんなこと言うはずがない。


私、雨に濡れたくないからって大野くんを使って幻聴を登場させちゃうのは良くないよ。



「あ、うん、そうだね。じゃあ私帰るね」



よくわからない相槌を送って、そのまま雨の世界へダッシュを繰り出そうとすれば、私の右手が掴まれて走り出せなくなった。……えっと、これは?



「だからさ、入れてやるって言ってんだよ」

「……はい?」

「お前、耳ついてんのか」


不機嫌を纏った声と表情で繰り返されて、先ほどの言葉が幻聴ではない可能性が転がり込んでくる。


「え、だって、大野くんが優しいわけないし……これは私の幻聴では?」

「仮にも女子を、こんな土砂降りの中放り込めねーわ、馬鹿じゃないの」


確かにこの間も大野くんはちょっとだけ、ほんのちょっとだけ優しかったし、ほんとに根は悪いやつじゃないのかも……?



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