オオカミ王子はわたし限定
「じゃあね、また明日。無防備で甘い、汐架ちゃん」
触れていた人差し指で私の唇をぬぐって、自分の唇に触れて。そのまま踵を返すりっくん。
ふっときみから離れて、一気に力が抜けて座り込みそうになるのを、壁に体を預けてなんとか体勢を保つ。
りっくんの後ろ姿が、目に映る。相変わらずスタイルが良くて、背筋が伸びていて姿勢も良くて。
今起こったことが、信じられない。
あんなの、りっくんじゃない。初めて見た。
りっくんは、私の推しで、みんなのアイドルで、クラスの王子で……。口元に手をやると、まだ人差し指の感触が残っていて。
「……夢?」
りっくんの後ろ姿は、もう暗くてよく見えない。
……これは、夢?
うん、きっとそうだ。そうにちがいない。
きっとこのスペシャルデー、全部夢なんだ。